記事の掲載日: 2025年11月23日
FemmeFatale(ファムファタル)「諸穂と浮雲(もろほとうきぐも)」
日程:2025年12月6日(土)14:00開演
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
<ご挨拶>
本日は「諸穂と浮雲」にご来場いただきありがとうございます。
FemmeFataleにとって、豊橋という街は、バンドとしての活動を大きく決定づけ、あたたかく応援していただいた故郷のような存在です。
本日はこれまでに作ってきた音楽を実った「諸穂」に、そしてこれからの音楽を流れゆく「浮雲」のイメージに託し、それぞれを楽しんでいただけるようご用意いたしました。最後までどうぞゆっくりとお楽しみください。
FemmeFatale
<プログラム>
1. park-grass(パークグラス)/安間誉和(あんまたかかず)
nomeolvides(ノメオルビデス)収録。藝祭2023公式テーマ楽曲。
でもこの3D写真は全然古びていなくて、像も信じられないくらいシャープだった。そこにいる誰もが、生きていてエネルギーにあふれて見えた。みんなその瞬間にしっかり存在していて、もう三十年近く続いている永遠の現在の一部を成していた。
Paul Auster 『Oracle Night』 柴田元幸(しばたもとゆき)訳、東京:新潮社、平成28年、53頁
2. La Cumparsita(ラ・クンパルシータ)/Gerardo Matos Rodríguez(ヘラルド・マトス・ロドリゲス)
ウルグアイ出身のロドリゲスが17歳の時に作曲した作品に、アルゼンチンのタンゴ楽団が中間部を付け加えて再構成。タンゴの古典曲として高い人気を誇ります。
3. Danzarin(ダンサリン)/Julian Plaza(ジュリアン・プラザ)アレンジ:安間誉和(初演)
作曲者フリアン・プラサは、プグリエーセ楽団をはじめ数々の楽団で活躍したピアニスト/バンドネオン奏者です。タンゴの音楽は踊りと切り離すことができません。訳すなれば「踊り手」となるこの作品、今回は安間のアレンジでお届けします。
4. Okami(オオカミ)/悦木啓人(えつきけいと)(初演)
FemmeFataleの結成公演「恐れと誘い」のために書き下ろされた作品。作曲家・悦木の処女作である本作品に、披露から現在までに得てきたものを組み込み、改訂版としました。狼の遠吠えは、その個体によって声が異なるといいます。自身の個性を音楽へと昇華させた「遠吠え」をお楽しみください。
5. 常寂光寺の四季(じょうじゃっこうじのしき)/安間誉和
ありとしある人は皆浮雲の思ひをなせり。
鴨長明(かものちょうめい)『方丈記』四.福原遷都
6. Georgette(ジョーゼット)/安間誉和(初演)
嵐の終わりを見越すように、おれはそうした破局を予感していた。すべてには終わりがあり、避けがたいものがいつの日かやってくると思わなければならないと、やつら自身もわかっていた。むしろそうなるのを熱烈に望んでいたのだ。
P.Soupault(フィリップ・スーポー)『パリの最後の夜』 谷昌親(たにまさちか)訳 、東京:国書刊行会、 2025年、 237頁
7. Ophelia(オフィーリア)/安間誉和
2024年プラットワンコインコンサートにて初演。nomeolvides収録。
悲しみというやつは、いつもひとりではやってこない。
かならず、あとから束になって押しよせてくるものだ。
W.Shakespeare(ウィリアム・シェイクスピア) 『HAMLET』(ハムレット)福田恆存(ふくだつねあり)訳、 東京:新潮社 、昭和42年 、159頁
8. Nuage(ニュアージュ)/悦木啓人
2024年プラットワンコインコンサートにて初演。
一つのモチーフを「当事者」と「傍観者」の視点からそれぞれ書き上げた楽曲。アルゼンチンタンゴに触れ、「踊り」という題材に惹かれました。その美しさを、「踊り手」と「観客」それぞれの視点から表現します。
9. Kumo(クモ)/悦木啓人
2024年プラットワンコインコンサートにて初演。nomeolvides収録。
スープを飲み、窓からのぞいた雲に見惚れ、そして突然我に返る。その瞬間を捉えた楽曲。バンドネオンとピアノの二重奏による本楽曲は、掴みづらい拍感と音色の操作によって浮遊感を生み出し、雲という自然物の美しさを描いています。
10. La Belle Dame Sans Merci(ラ・ベル・ダム・サン・メルシー)/安間誉和
2024年プラットワンコインコンサートにて初演。nomeolvides収録。
And this is why I sojourn here,
Alone and palely loitering,
Though the sedge is withered from the lake,
And no birds sing.
from J. Keats La Belle Dame sans Merci
11. ブエノスアイレスの冬/Astor Piazzolla(アストル・ピアソラ)
アストル・ピアソラが作曲した《ブエノスアイレスの四季》の一曲。元々は組曲ではなく、《ブエノスアイレスの夏》が舞台作品のために書き下ろされ、《冬》は四年後に作曲されたものです。
12. Libertango(リベルタンゴ)/Astor Piazzolla(アレンジ:安間誉和)
1974年にアストル・ピアソラが作曲したこの作品には、現在までに様々なアレンジがされてきました。今回は安間によるFemme Fataleヴァージョンでお届けします。
<プロフィール>
FemmeFatale
2023年、東京藝術大学楽理科に在籍するメンバーで結成されたインストバンド。
バンドネオン奏者鈴木崇朗主導によるアルゼンチン・タンゴと、安間誉和、悦木啓人両名によるオリジナル楽曲を中心に活動。オリジナル楽曲《park-grass》が東京藝大学園祭「藝祭2023」公式テーマ楽曲に選出されたほか、《Ophelia》が「東京藝大アートフェス2024」ウェブ掲載作品として採択されるなど在学中から高い評価を受ける。Hibiya festival 2025「NEXTアーティスト2025」選出。
安間誉和(あんまたかかず) [ピアノ・作曲]
愛知県豊橋市出身。時習館高等学校を経て、東京藝術大学楽理科を卒業。上京前までの16年間、オリエント楽器豊橋店に通い音楽を学ぶ。ピアノを志賀たか子(しがたかこ)氏、作曲を平井正志(ひらいまさし)氏の各氏に師事。自作曲によりJOCハイライトコンサートin名古屋、JOCシティコンサートin豊橋、in刈谷にそれぞれ出演。2024年8月に全曲オリジナルのピアノアルバムを制作。
悦木啓人(えつきけいと) [ベース・クラリネット・作曲]
広島県広島市出身。クラリネットを今村朝美(いまむらあさみ)氏、実重華奈(さねしげかな)氏に師事。東京藝術大学楽理科を卒業。大学進学後「音×美 うたをみる展」等のイベント企画への参加や作曲活動を始める。2022年度藝祭の公式テーマ曲「ハレとケ」を作曲。2023年にはウィスキーの銘柄をテーマにした公演「酔吟 vol.1」で作曲を担当。劇伴音楽を中心に制作や演奏活動を続ける。
鈴木崇朗(すずきたかとき) [バンドネオン]
北海道札幌市出身。東京藝術大学楽理科を卒業。バンドネオンを小松亮太(こまつりょうた)氏に師事。小松亮太&オルケスタティピカのメンバーとして南米ツアーに参加。単身アルゼンチンに留学し、オスバルド・ モンテス氏、フリオ・パネ氏、ネストル・マルコーニ氏に師事。また、アルゼンチンでの様々なタンゴフェスへ参加。2014年、2015年とアンドレス・リネツキー楽団のメンバーとして国内ツアーに参加。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)を始めとするドラマ、アニメの劇中曲の演奏に参加。自身のタンゴバンド「鈴木崇朗cuarteto」を主宰し、2020年に1stアルバム『Toda mi vida』(トダ・ミ・ヴィダ)を発表。また、小松真知子(こまつまちこ)&タンゴクリスタル、小松亮太&オルケスタティピカ等で活動中。現在国内外でのコンサート、レコーディング等で活躍中。
長谷川志樹(はせがわもとき)[ピアノ・メロディオン・シンセサイザー]
愛知県知多郡東浦町出身。明和高校音楽科ピアノ専攻を経て東京藝術大学楽理科を卒業。ピアノを磯貝直子(いそがいなおこ)氏、西典代(にしのりよ)氏に師事。大学在学中より、多数の自主企画を主導・参加。今春より42Tokyo(フォーティーツートウキョウ)に在籍。
山本大地(やまもとだいち) [ヴァイオリン]
千葉県船橋市出身。ヴァイオリンを伊藤悠子(いとうゆうこ)氏、尾池亜美(おいけあみ)氏、タンゴ・ヴァイオリンを吉田篤(よしだあつし)氏、指揮法を寺岡清高(てらおかきよたか)氏の各氏に師事。早稲田大学文学部を経て現在東京藝術大学楽理科4年次に在籍。
専門はディレッタンティズム研究。その他、指揮、演奏活動、新作初演、プログラムノート執筆、各種レコーディングへの参加等、学内外を問わず幅広く活動。
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